翻訳教室

ここ数年、いくつかの勉強会に参加させてもらっているのだが、そのひとつに、青山ブックセンターで開講されている翻訳教室がある。現代文学を訳す教室なので、ずっと尻込みをしていたのだが、周りの人が何人も受講していて評判がよかったため、試しに昨年の六月に開催された単発講座に参加してみた。それが、春の公開教室2だった。「しゅわしゅわと炭酸の泡のように立ちのぼる」など、普段はまったくでこない。日頃使っていない脳みその部分を総動員しても、あぁ、読書量が足りない、と完敗だった。

この教室は通常は六回シリーズで、ひとり二期まで受講可能。各期の間に、二回公開教室が開催されている。春の公開教室2の後に、13期(2016年10月26日に終了)が始まった。月1回の教室で、二週間くらいで八百ワード程度の課題を訳す。たいていは既訳がない現代小説。普段の仕事では裏取りをしたらなんとか訳せるものがあるが、フィクションは読めないことには訳せない。通常の仕事では訳抜けが、と細かいことがいちいち気になるのだが、勉強会の課題だと、さぁ、思い切り絵を描いてみましょう、ということで、実に楽しい。この感覚はなんだろうかと思っていたら、大学の英文学の授業だった。純粋に小説を読んで、訳すなんて忘れてしまっていた。翻訳を仕事にするようになって十七年目に入ったのだが、みんなでひとつの課題を訳して、あぁだこぉだいうのは生涯続くライフワークになったらいいな、と思う。

13期が終わり、秋の公開教室冬の公開教室があり、1月から14期が始まった。まだ始まったばかりではあるのだが、その14期もあと5回。今回の課題は、13期でも取り組んだLorrie Mooreの短編小説「Paper Losses」。

クラスでは上手く訳せている人の訳文が紹介される。上手い部分だけ、というのがみそだろう。他の人の訳をみていると、あぁ、ここ上手く理解できていなかった、とか、ここはもうちょっとなんとかならなかったの、とか、だめな部分は自分が一番わかる。

以前はフィクションなんて無理無理と思っていたのだけど、仕事ではなく純粋に読んで訳す、ということが新鮮で、ねぇ、ねぇ、あそこどうやって訳した? などと大学生みたいに月に1回集まっている。14期は6月に終わるのだが、公開教室がおそらく7月、8月ごろに開催されると思うので、興味がある人は気をつけているといいかもしれない。毎回あっという間に埋まるので、フェイスブックでOB・OGの方のポストを見ているのが確実だろう。

それでは公開教室・翻訳教室でお会いしましょう。

(写真)去年の夏に坊主が城ヶ島で体験ダイビングをしたときに撮った海洋生物。まっきー、名前は何でしたっけ?

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実況、翻訳会社のトライアル採点

通訳・翻訳ジャーナル 2017年春号」に「第26回 JTF翻訳祭」レポートが掲載された。当日開催された24のセッションのうち、4セッションが紹介されている。

モデレーターをさせてもらったセッション「実況、翻訳会社のトライアル採点」の模様は、フリーランス翻訳者の玉川 千絵子さんが「JTFジャーナル」の翻訳祭特集号にまとめてくれているので、ぜひこちらもお読みいただきたい。

毎年「JTFジャーナル」では翻訳祭特集号を発行しているが、ウェブ版、PDF版ともに無料で読める。PDF版は抜粋版だが、ウェブ版では24セッションすべてのレポートが読めるので、翻訳祭に参加できなかった方、時間帯が重なって聴けなかったセッションがある方など、ご活用いただければと思う。

「JTFジャーナル」第26回 JTF翻訳祭特集号
ウェブ版:
http://journal.jtf.jp/honyakusai/

PDF版:
http://journal.jtf.jp/files/user/JTFjournal287_20170102.pdf

JTFのイベント報告:
http://journal.jtf.jp/eventreport_list/

バックナンバー:
http://journal.jtf.jp/backnumber/

「通訳・翻訳ジャーナル 2017年春号」では、日英翻訳者 遠田和子さん、IT翻訳者 小林晋也さん、フリーランス翻訳者 大塚英さん、翻訳者 武藤陽生さん、文芸翻訳者 越前敏弥さん、映像&ゲーム翻訳者 永井歌子さんなど、みなさん惜しみなくノウハウを共有してくれているので、立ち読みじゃなく買ってくださいね。

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