『生命のつながりとしくみ図鑑』河出書房新社

6月27日に7冊目の訳書が刊行されます。1冊目の『世界のミツバチ・ハナバチ百科図鑑』と同じ河出書房新社からです。ハチの図鑑の刊行が2015年で、早いもので出版翻訳を始めてから10年が経ちました。今年は秋にもう1冊刊行予定なので、そちらも楽しみです!

さて、今回刊行される『生命のつながりとしくみ図鑑』について、訳者の立場から紹介させてください。

原書のタイトルは、Timelines of Nature。どんな邦訳になるのかなあ、と思っていたら、上記のようなタイトルになりました。去年の4月から9月まで翻訳していたのですが、宇宙、地球、植物、ほ乳類、昆虫、爬虫類などなど、かなり広範囲にカバーしています。オールカラーで総ルビ。まずは、約138億年前に起きたとされるビッグバンから始まります。約90億年後に太陽ができます。そして約46億年前に太陽系が生まれます。月はどうやってできたのか。地球はどうやってできたのか。約46億年前の先カンブリア時代から、わたしたちが生きている第四紀まで、地球の歴史を紹介します。わたしたちがいまいる時代は、人新世だという学者もいるので、人新世についても説明されています。この地球史の部分は、岡山理科大学 教育推進機構 准教授 佐藤友彦先生に監修していただきました。佐藤先生、ありがとうございました!

この図鑑は、3部構成で、「地球」、「植物と菌類」、「動物」に分かれています。最後は北極に住むホッキョクグマについてなので、宇宙の始まりから順番に読んでもよいですし、ぱらぱらとめくって、好きなところから読んでもよいようになっています。「生き物たちの一日、一週間、一年、一生、進化」と生命のサイクルを見開きで紹介しています。たとえば、恐竜が好きな子には、約2億4000万年前に現れた最初の恐竜から、約6600万年前まで生きていた北米最大級の捕食者ティラノサウルスまで、恐竜が地球を支配してきた約1億6500万年の歴史がおもしろいかもしれません。

オールカラーというだけでも綺麗な図鑑なのですが、レイアウトが読んでいて楽しいです。くるくると本を回して読まないと首が痛くなっちゃうようなレイアウトで、おもしろいレイアウトのページを選んで読んでもいいかもしれません。飽きっぽい子でも集中して本を読めるかも? 

この図鑑のなかで、どのページがお気に入りかと訊ねられたら、「ネズミが土にかえるまで」「マインドコントロール」「超くさい花」「カビのすごいパワー」「クジラが海にかえるまで」が好きです笑 わあわあ、きゃーきゃー言いながら読むのが楽しい笑 

これからの季節、夏休みの課題にちょうどよいと思います。たとえば、気になったページをもうちょっと調べてみて、観察できる植物や動物だったら、そういう視点もいれてみたら、みなさんのオリジナルのレポートになると思います。

手元に置いて、朝読書のときに、ぱらぱらと読んでもよいし、ちょっと高いなあ、と思う場合は、ぜひお近くの図書館にリクエストしてみてください。図書館検索サイトのカーリルで検索してみてもよいでしょう。

図鑑の翻訳をしていると話したときに、日本にも図鑑はあるのに、なぜわざわざ海外の図鑑を訳すのかと訊ねられたことがありました。この図鑑の原書は、DK社というイギリスの出版社がまとめたものです。e-honの説明には、「1974年にロンドンにて創業した世界トップクラスの図鑑の出版社。世界最大の出版グループPenguin Random Houseの一員」とあります。日本は小さな島国ですが、英語で書かれた本は日本語で書かれた本よりも多く存在し、宇宙、植物、動物について書かれた論文の数は、日本語で書かれた数よりも多いでしょう。そんな数多くある英語の本をすべて訳すだけの時間もお金もないわけですが、英語圏で人気の本を選んで、日本語版をつくってくれているのが日本の出版社です。今回の日本語版の翻訳にあたり、河出書房新社の編集者さん、校正者さん、校閲者さんには大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

そんなたくさんの人の手を借りてつくられた図鑑です。ぜひ手にとってみてほしいと思います。科学読み物はどんどん新しい情報がでてくるので、この図鑑をきっかけに、自分でさらに探して、読んで、考えて、知識を増やしていってもらえたら嬉しいです。

あとがきにかえて。

2025年6月22日 
翻訳者 矢能千秋

おまけ:
子どものことを書くとまた怒られるのですが、うちの理系男子はよく図鑑を読んでいたそうです。

生命のつながりとしくみ図鑑河出書房新社
DK社 編
矢能千秋 訳

単行本 B4変形 ● 288ページ
ISBN:978-4-309-25478-4 ● Cコード:8640
発売日:2025.06.27(予定)

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