小網代の森「ホタル観察」

久しぶりに小網代の森がホタル観察のために夜間解放されることになった。

日時は2日間。わたしはいつも大体7時過ぎくらいに森に入って、暗くなるのを待つ。

暗くなってくると、ちらほらとホタルが点滅しながら飛んでいるのが見えてくる。

中央の谷を下り、まんなか湿地あたりから、浦の川沿いにホタルが見え始める。

やなぎテラスくらいまでがよく見えると思うけど、えのきテラス方面に少し歩いて、遊歩道が浦の川から離れてきて、油壺方面から歩いてくる人が増えてきたところで、いつもは引き返す。

ところどころにスタッフの人がいるけれども、足元を照らす懐中電灯は必須。

昼間の森も楽しいけれども、ホタルが見られる夜間解放日はまた格別なので、お近くの方はぜひお運びください。

日程:2025年5月30日(金曜日)、6月4日(水曜日)の計2日間

時間:18時から21時まで(21時に閉場しますので、20時までにご入場ください)

※来場者の安全を考慮し、平日2日間の開催とさせていただきます。

小網代の森
https://chiaki-yano.com/2023/08/08/%e5%b0%8f%e7%b6%b2%e4%bb%a3%e3%81%ae%e6%a3%ae/

2024年に買った本:75冊、計86,587円

確定申告の時期なので、去年買った本を数えてみた。ネットで買った本は、75冊、計86,587円。一昨年よりも減ってしまった。

リーディング用の本を抜かすと、以下の通り。

1 「記憶屋」シリーズ【全4冊合本版】 (角川ホラー文庫)

2 Fairy Tale (English Edition)

3 S・キング50周年たっぷり試し読み 『ビリー・サマーズ』ガイドブック (文春e-Books)

4 The Light in Everything: Shortlisted for the Yoto Carnegie Medal 2023 (English Edition)

5 When There Were 9 (The Murder Mystery Book Club 4) (English Edition)

6 アウトサイダー 下 (文春文庫)

7 アウトサイダー 上 (文春文庫)

8 アンダー・ザ・ドーム(1) (文春文庫)

9 アンダー・ザ・ドーム(2) (文春文庫)

10 アンダー・ザ・ドーム(3) (文春文庫)

11 アンダー・ザ・ドーム(4) (文春文庫)

12 ウィズダム英和辞典 第4版

13 グレイラットの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

14 ザ・スタンド(1) (文春文庫)

15 ザ・スタンド(2) (文春文庫)

16 シャイニング(下) (文春文庫)

17 シャイニング(上) (文春文庫)

18 つばさをちょうだい

19 できる翻訳者になるために プロフェッショナル4人が本気で教える 翻訳のレッスン (講談社パワー・イングリッシュ)

20 テメレア戦記 7 黄金のるつぼ

21 テメレア戦記Ⅳ 象牙の帝国

22 テメレア戦記II 翡翠の玉座

23 テメレア戦記III 黒雲の彼方へ

24 テメレア戦記V 鷲の勝利

25 テメレア戦記VI 大海蛇の舌

26 トゥルー・クライム・ストーリー (新潮文庫 ノ 1-4)

27 ドクター・スリープ 下 (文春文庫)

28 ドクター・スリープ 上 (文春文庫)

29 ネコ全史 君たちはなぜそんなに愛されるのか (ナショナル ジオグラフィック別冊)

30 ビリー・サマーズ 下 (文春e-book)

31 ビリー・サマーズ 上 (文春e-book)

32 ファインダーズ・キーパーズ 下 (文春文庫)

33 ファインダーズ・キーパーズ 上 (文春文庫)

34 ふだん使いの言語学: 「ことばの基礎力」を鍛えるヒント (新潮選書)

35 ペット・セマタリー(下) (文春文庫)

36 ペット・セマタリー(上) (文春文庫)

37 ミザリー (文春文庫)

38 ミスター・メルセデス 下 (文春文庫)

39 ミスター・メルセデス 上 (文春文庫)

40 ゆすってごらん りんごの木

41 わたしの名前はオクトーバー (児童図書館・文学の部屋)

42 哀惜 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 25-1)

43 悪霊の島(下) (文春文庫)

44 悪霊の島(上) (文春文庫)

45 闇の左手 (ハヤカワ文庫SF)

46 英語クリ-シェ辞典: もんきりがた表現

47 花束は毒 (文春文庫)

48 合本 IT【文春e-Books】

49 侍女の物語

50 失われたものたちの国

51 失われたものたちの本 〈失われたものたちの本〉シリーズ (創元推理文庫)

52 呪われた町 下 (文春文庫)

53 呪われた町 上 (文春文庫)

54 小学館世界J文学館 ギリシア神話

55 小学館世界J文学館 ひとにぎりの黄金 ~エイキン自選傑作集~

56 小学館世界J文学館 北欧神話

57 世界の誕生日 (ハヤカワ文庫SF)

58 世界中の言語を楽しく学ぶ(新潮新書)

59 精霊を統べる者 (創元海外SF叢書)

60 全身翻訳家 (ちくま文庫)

61 地球・宇宙 (学研の図鑑LIVE(ライブ)ポケット)

62 通訳者・翻訳者になる本2025 (イカロスMOOK)

63 通訳翻訳ジャーナル2024SPRING  

64 任務の終わり 下 (文春文庫)

65 任務の終わり 上 (文春文庫)

66 破果

67 白昼の悪魔 (クリスティー文庫)

68 武器

69 物語北欧神話 上

70 文庫 その日本語、ヨロシイですか?: 楽しい校閲教室 (草思社文庫 い 10-1)

71 翻訳ってなんだろう? ──あの名作を訳してみる (ちくまプリマー新書)

72 翻訳教室 ――はじめの一歩 (ちくま文庫)

73 和歌文芸 令和六年冬号: 令和のあたらしい和歌と和歌文化の様々な表現 (令和和歌所)

ああ、脱線してしまった。確定申告に戻ります。

キング祭り:『デビュー50周年記念! スティーヴン・キングを50倍愉しむ本』文春e-Books

今年がスティーブン・キングのデビュー50周年だということで、昨年くらいからキング作品を読んでいる。最初に買ったのはどれだったか、と思い、履歴をみてみた。

最初は、これ。『デビュー50周年記念! スティーヴン・キングを50倍愉しむ本 』文春e-Books。 2023/6/2に購入している。文藝春秋電子書籍編集部の編集で、なんと無料。太っ腹である。キングは多作な作家で、どこから読み始めたらいいかわからない! ホラーは苦手だけど、エモいのを読みたい! など、キング本の翻訳者である白石朗さんと担当編集者さんが、キング作品について熱く語り、読者をキング・ワールドに導いてくれるガイドブックだ。なんと無料。とりあえず、ぽちってみて、ぱらぱらと眺めてみることをお薦めする。

さて、この本の魅力について、ちょっと説明しよう。

まず、わたしのお気に入りは、白石さんと担当編集さんの対談。キング作品を隅から隅まで知り尽くしたふたりならでは。確かにキング作品を読み進めていくと、作品にでてくる人や場所が繋がっていて、実におもしろい。たとえば、『シャイニング』に出てきた町が、『ミザリー』でも出てきたり。とりあえず対談だけ読んでもおもしろいので、ぜひみなさんもキング・ワールドに足を踏み入れてほしい。 

次にわたしが重宝しているのは、キング作品のマトリックス。エモい、リアル、怖い、幻想と怪奇にわかれていて、それぞれの作品がどんな内容なのかがわかる。『スタンド・バイ・ミー』はリアルでエモい。『ミザリー』はリアルで怖い。『シャイニング』は怖くて、幻想と怪奇などだ。

あと、収録されている短編もいい。キングの短編が無料で読めるだけでも、このガイドブックはダウンロードする価値がある。その名も、『ローリー』。わたし自身は、これまでキング作品は映画で観ることが多く、原作をあまり手にとってこなかったのだけど、この短編を読んで、キング祭りが始まってしまった。わたしがここのところひとりでやっているキング祭りについては、また別の機会に紹介したい。短編なのですぐに読み終わるのだけど、最後は「ぎゃーっっっ! にぃぃーげぇぇーてぇぇーーーーっっ!」と叫んでしまうこと必至。読みたくなった?笑

異能機関』の1章の抜粋も入っているのだけど、思い出してきた。この後に『異能機関』をぽちって読み始めて、そのまま他の作品を数珠つなぎのように読み始めてしまったのだった。売り方がうまい。この『異能機関』については、10月14日にイベントがあるので、未読の人は参加するといいかも? 1ヶ月の見逃し配信(11月14日まで)つきだって。ちなみにわたしはこの『異能機関』の冒頭が好き。最後は、「えぇぇぇぇぇーーーーっっ、そっち!」という感じだった。振り幅が大きいのがキング作品の魅力でもある。

翻訳家トーク 宮﨑真紀x白石朗  スパニッシュ?アメリカン? ホラーを読む  〜シュウェブリン『救出の距離』とキング『異能機関』を中心に

キング祭りをするにあたって、さて次は何を読もうかな、と本を選ぶときにマトリックス同様助かるのは、各作品の説明。マトリックスと作品説明を片手に、電書をぽちぽちして積んだら秋の夜長の準備万端。わたしは12時に寝るようにしているのだが、続きが気になってついつい夜更かししてしまうのが悩みの種だ。怖いのは苦手、という人は、エモい、怪奇と幻想に入っている作品から読むのもいいだろう。わたしは『異能機関』が読み終わったあとに、市ヶ谷のイベントに行った際に、キングの担当編集さんがキング本を会場で売っていて、薦められるがままに買って読んだのが、『11/22/63』。この作品はマトリックスでは、エモいMax! エモいのが好きな人は、ぜひ読んで!

わたしはBookmeterで読書ログをつけているのだけど、『11/22/63』の次に読んだのは、『ビリー・サマーズ』。これもエモくなかった? 最後がいい! この作品は、「S・キング50周年たっぷり試し読み 『ビリー・サマーズ』ガイドブック」というのが、やはり無料で出ているので、こっちもダウンロード推奨。

わたしはいま『IT』を読んでいるのだけど、一緒にキング祭りをする人は大歓迎。わたしがこれまでに読んだキング作品は、Bookmeterにまとめてあるので見てみてね。

次の回では、『ビリー・サマーズ』を紹介する(予定笑)。あと『IT』を読み終わったら読まないといけないなあ、と思っているのは、『コロラド・キッド 他二篇』。キング作品をあまり読んだことがない人は幸せだ、キングは多作だから、これから読める本がたくさんある、とだれかに言われたことがある(担当編集さんだった?)。本の好みにもよるかもしれないけど、わたしはいまのところ外れなし。最初は訳者読みをしていたのだけど、キングはいろいろな人が訳していて、他の翻訳者さんの作品もキング・ワールド全開でどれもおもしろい。みなさんのお薦めのキング本があったら教えてくださいね♪ 

おまけ:
まったく話は変わるのだけど、このイベントの手伝いをしているので遊びにきてね♪

よむ! きく! あそぶ!
JBBYおすすめ☆世界と日本の子どもの本

会期中の週末に、IBBYとJBBYがおすすめする子どもの本を自由に手に取って読んでいただいたり、JBBYのボランティアが、多言語の読み聞かせやゲームなど楽しい企画をご用意します。

実施予定日:
10.6[日] 19[土] 20[日] 26[土] 27[日] 11.2[土] 9[土] 10[日] 12.7[土] 8[日]

 

新潮社の元校閲部長直伝! その日本語、ヨロシイですか?

新潮社の元校閲部長直伝!
その日本語、ヨロシイですか?

ドキッとするタイトルである。縁があって、新潮社校閲部元部長で現在はフリーの校閲者をされている井上 孝夫さんと、第33回JTF翻訳祭2024に登壇することになった。リアル会場とオンデマンド配信があり、このセミナーはオンデマンドで配信される。事前に録画するわけだが、質問を募集しているので、参加を予定している方は、ぜひ質問を寄せてほしい。司会はなんとxxさん! 面白い話になりそうだ。

オンデマンド視聴のみだと、一般は¥9,900。

その他のプログラムはこんな感じ。

事前質問投稿フォーム
受付期限:2024年8月9日(金)正午まで

たくさんの質問、お待ちしています!

写真は左から、井上さんの著書新潮社のベストセラーの本棚、神楽坂で食べたハンバーガー。

「AI時代の文芸翻訳」まとめ・感想

 昨日は青山で開催された川添愛さん、鴻巣友季子さん、吉田恭子さん(司会)のテーマトーク「AI時代の文芸翻訳」を聞いてきた。

 AI翻訳は敵か味方か。最初の質問に対して大学で翻訳を教えている鴻巣さんは、学生にChatGPTを使わせて誤訳を指摘させているという。まずは自分で訳し、ChatGPTにかけて、誤訳を説明させるのだ。ChatGPTは膨大なデータから共起されるものを持ってきて「意味」は通じる文をつくることはできるかもしれないが、人間の脳が行っている細やかで複雑な創作にはスタイルがあり、意図を伝える文章にはまだできない、ということだ。たとえば、詩、言葉遊び、ジョーク、皮肉、罵倒語は難しい。

 ChatGPTの訳と人による翻訳の違いを説明するのに、アマンダ・ゴーマンさんの詩が紹介された。英語の文は話に聞き入っていてメモを取りそびれてしまったのだが、人による翻訳として紹介された文を見てもらえばその違いはわかるに違いない。

「歩哨に立つ 初めての夜 月さやか」

 原文も俳句詩で、訳文も七五調だ。

 もうひとつ例に出された英語の表現として、Marble movieという言葉が紹介された。マーブル。この単語を聞いて、わたしたちはなにを思い浮かべるだろうか。音か、イメージか、色か、硬さか、冷たさか。内面世界の広がり方を訳語に含ませることができるのは人による翻訳ならではだろう。

 人間と言語の関係を見てみると、時間の経過とともに、言葉の意味が変わってくる。たとえば、10代で読んだ本を50代で読み返すと、受け手によって意味が違ってくる。その例として比喩表現があげられた。黒柳徹子さんの自伝的小説「窓ぎわのトットちゃん」では、「ふかし芋のようなあなた」という表現が出てくる。男の子は褒め言葉のつもりで言ったのだろうが、トットちゃんは芋だなんて、と怒る。でも年をとって振り返ってみると、ふかし芋のように甘くて温かくてほかほかで、ということを言いたかったのではないかと思い当たる。

 時代のなかの言葉の変遷として、もうひとつあげられたのは、Sisterhood。いまでは女性間の絆、連帯というポジティブな意味で使われる言葉だが、参政権や男女平等を訴えていた時代では、ネガティブな意味で使われていたそうだ。

 そうやってわたしたち翻訳者は、個人の辞書をボキャブラリーとして蓄積してきている。言葉の個人史を編んでいるのだ。はたしてその意味でのシンギュラリティは訪れるのだろうか。

 言語化するプロセスが紋切り型になっていくと、よりアウトプットは自動化されていく。たとえば絵文字。返信をスマイルマークで済ませたり、自動生成された文章で済ませたりしているうちに、気持ちと言語の関係が変わってくる。言語化する行為を放棄しているうちに、言葉が消え、物が消え、記憶が消え、感情が消える。わたしたちは言葉で形づくられている。知覚が統合され言語となり、身体性をもつ。言葉と身体。人が訳す文章には身体性があるということだろうか。

 最後に罵倒語のChatGPT訳と人による翻訳の比較が紹介された。

It’s the Guardian reading, tofu-eating, wokaratti!

 会場で紹介された鴻巣さんの訳はここでは紹介しないが、わたしたちも自分で訳してみてChatGPTと比べてみるとおもしろいかもしれない。

 あっという間の1時間で、話に聞き入っているとメモの手が止まるという状態だったので、まとめが断片的かもしれないが、その点はご容赦願いたい。今回のイベントを企画してくれた駐日欧州連合代表部に感謝いたします。

『さやかに星はきらめき』(村山早紀著)

 11月21日に刊行予定の『さやかに星はきらめき』(村山早紀著)の読者モニターに応募してみた。ファンタジーは読むのが好きなので、SFファンタジーということで読みたくなった。読み始めてみると、ファンタジーとSFを行ったり来たりするような、ファンタジー好きにもSF好きにも楽しめる内容だった。なんといっても扉絵に惹かれた。イヌとネコとトリと女の子が窓から宇宙を眺めている。はて、これは一体、どういう設定なのだろうか。本書は五つの章で構成されていて、それぞれの章のなかで作中作が出てくる。いわゆる短編が五作品収録されているわけだが、書籍編集者が「人類すべてへの贈り物となるような本」を作るために集めたお話として紹介されていく。その編集者の名前がまたまたおもしろい。キャサリン・タマ・サイトウ。なんと猫を先祖にもつネコビトなのだ。彼女と一緒にこの本の企画を立てている副編集長は、イヌビトのレイノルド・ナカガワ。そのほかにも、トリビトで校正・校閲者のアネモネ、古い人類で雑誌編集部編集長のリリコが登場する。地球は生物が住めなくなっていて、人類が宇宙へ脱出してから数百年が経っており、舞台は月から故郷の地球を眺める新東京。出てくるお話はどれも「宇宙で起きたクリスマスの奇跡」だ。地球は度重なる災害や戦争で住めなくなり、人類は新天地を目指して宇宙へ飛び立ち、数百年が経った時代の話で、月の地下に住む人、天蓋に覆われた高層ビルに住む人などが出てくる。故郷の地球が見える月に住む人もいれば、もっと遠くに新天地を求めた人もいる。そんな中で、ネコビト、イヌビト、トリビト、古い人類が、「時代を超え今と未来の人類に愛される本」を作っていく。ファンタジーと聞くと甘ったるい印象を持つ人もいるかもしれないが、SFファンタジーだからだろうか。SFファンも十分楽しめると思う。はたしてサンタクロースはいるのだろうか。ひとの祈りや願いは通じるのだろうか。ちょっと日常に疲れた大人にもぜひ読んでほしい一冊だった。読後感が温かい。読書会があったら参加したい。ブックサンタでクリスマスプレゼントにもいいかも。

『さやかに星はきらめき』自分の感想
https://togetter.com/li/2255212

さやかに星はきらめき』(村山早紀著)

やまねこの勉強会 

【勉強会については、やまねこ翻訳クラブに了解を得てから公開しています。】

 やまねこ翻訳クラブの勉強会に初めて参加した。やまねこには4月に入会して、おしゃべり会、読書会などに参加してきた。掲示板でのやりとりも活発で、入会してまだ半年くらいなのにずいぶんと充実したやまねこライフを送っている。やまねこの勉強会には参加してみたいとつねづね思っていた。そんなところに、「通訳・翻訳ジャーナル」の誌上翻訳コンテストの案内がツイッターで流れてきた。課題はファンタジー、出題者は三辺律子さんだ。わたしはコンテストへの応募資格はないが、これは訳さなきゃ! と思い、訳してみた。幻想性の高いハイファンタジーなのでなかなか難しい。訳してみると、人と話したくなる。そうこうしているうちに、コンテストの締め切りが過ぎ、掲示板に事後勉強会のスレッドが立った。さすがやまねこである。どういう形での勉強会なのかわからなかったが、参加する方向で考えていた。そんなとき、ツイッターのタイムラインで原書を読んでいるやまねこさんを発見! なるほど。やはり訳すのであれば原書を読んだほうがいいな、と思い、読み始めた。今回の課題は、『A Song of Wraiths and Ruin』(Roseanne A. Brown著)の冒頭である。2冊にまたがる話で、1冊目は475ページ、2冊目の『A Psalm of Storms and Silence』は560ページある。長編ファンタジーは刊行されにくい、と聞くが、課題作の日本語版は三辺律子さんの訳で評論社から発売予定とのことだ。評論社と言えば『指輪物語』を刊行している出版社だ。自分が実際に訳す場合はまずは読んでから訳すので、勉強会の案内を待ちながらまずは原書を2冊読んだ。

 8月20日にコンテストの締め切りがあり、参加者募集のスレッドが立ち上がった。ハンドル名とはいえ、訳書がある会員、これから出版翻訳者としてデビューする会員もいるので、著作権・守秘義務についての説明があった。9月20日に参加表明の締め切りがあり、10月に入ってからグループに分かれて勉強会が始まった。わたしが参加したチームは参加者が4名。初稿、改稿、最終稿と1週間毎に参加者限定の掲示板に公開する。公開された訳文に対して、ほかの参加者がコメントする。そのコメントに対して訳者が訳出根拠などを提示して原文理解が正しいかをすり合わせていく。意見が分かれる箇所については個別にスレッドが立ち、互いに調べたものを共有していく。そんなこんなであっという間に改稿の締め切りがやってきた。わたしは改稿では原文から離れて訳文だけで推敲してみた。ここでつくづくフィクションとノンフィクションの訳し方の違いを感じた。ノンフィクションはノンフィクションで難しさがあるが、今回の課題はヤングアダルト向けのファンタジーということで、『ハリー・ポッター』などに慣れ親しんだ若い世代に読んでもらえるように改稿してみた。これまでにさまざまな勉強会に参加してきたが、初稿、改稿、最終稿と3回訳文を出すことが決まっているものは初めてだった。ましてや先生ではなく同業の翻訳者から、それも複数の翻訳者から訳文にコメントをもらうのは初体験。三者三様のコメントで初めは戸惑ったが、訳出根拠を説明しているうちに方針が定まってきて、最後は最終的に決めるのは翻訳者本人と腹をくくり、今回は3回あるからと改稿はかなり大胆に手を入れてみた。すると案の定、初稿のほうがよかった箇所が出てくる。手を入れれば入れるだけ収拾がつかないかに見えたが、ところどころ初稿の訳に戻して、最終稿を仕上げた。自分ひとりで推敲するのと、第三者の目を通して読みにくい部分を指摘してもらいながら直すのではずいぶんと違い、初校、二校、三校くらいの感覚で取り組むこととなった。10月2日に初稿を提出して、17日に最終稿を提出したので、約2週間にかけて課題文を推敲したことになる。課題自体は500ワードくらいで、実際の本は2冊で1000ページを超えるのでこのペースで訳していては訳し終わらないのだが、改めて「ファンタジー、楽しい!」と思えた勉強会であった。今回は閉じた掲示板での勉強会だったが、勉強会終了後、この掲示板は削除されるらしい。グループに分かれて勉強会をやっていたが、終了後にZoomでの打ち上げがあるとのことだ。次号の『通訳・翻訳ジャーナル』で三辺律子さんによる講評が掲載されると思うが、三辺訳と自分の訳を比べるのも楽しいに違いない。同コンテストの最優秀賞(1名)は賞金が3万円、優秀賞(2名)は1万円だそうなので、やまねこさんから入賞者が出ることを願っている。やまねこ翻訳クラブでは「いたばし国際絵本翻訳大賞」の事後勉強会も毎年やっていたように思うので、応募する人は参加してみるとよいだろう。今年の課題作品は、『If I had a little dream』(作:Nina Laden、絵:Melissa Castrillon)だそうだ。

 AI翻訳が席巻している昨今だが、この熱量で翻訳を勉強している人たちがいるのでまだ大丈夫なのではないかと個人的には感じている。わたしは昨年からヤングアダルトの勉強会に参加しているのだが、やまねこ会員の知り合いも増え、今年の4月に入ってからようやくやまねこ翻訳クラブに入会した。ベテランねこさんたちは面倒見がいいし、若手ねこさんたちは元気だし、層の厚みを感じる翻訳クラブだなあ、と思う。会費も手ごろなので関心のある人は入会してみたらどうかと思う。

 最後になったが今回の勉強会を企画してくれたやまねこさん、同じチームで重箱の隅をつつきあったやまねこさんたちに感謝申し上げます。

隣のおうちの金木犀

『ぼくは川のように話す』(偕成社)の絵本作家シドニー・スミスさんの話を聴いて

ぼくは川のように話す』(偕成社)の絵を担当されたシドニー・スミスさんの講座があるというので、出版クラブまで足を運んできた。日本国際児童図書評議会(JBBY)が主催し、板橋区立美術館偕成社が協力、「子どもゆめ基金」助成活動として開催された。会場とオンラインで約200名が参加したそうだ。当日は講師として絵本作家のシドニー・スミスさん、聞き手は偕成社の担当編集者である広松健児さん、通訳は前沢明枝さん(英日)、中野怜奈さん(日英)という豪華な構成だった。会場には翻訳を担当された原田勝さんもいらしていた。

 講座のタイトルは「美しい光と影を描き出すシドニー・スミスの絵本表現~『ぼくは川のように話す』を通して作者が語る~」。この絵本の文はジョーダン・スコットさん(詩人)によるもので、シドニー・スミスさんは絵を担当されている。絵本自体は42ページですぐに読めてしまうものだが、スコットさんの詩を受け取ってから、絵のラフを描き、最終的に絵本として完成するまでの創作について話を聴いた。

 まずはスミスさんの幼少時代の話から。小さいころに影響を受けた本を何冊か紹介してくれた。そのうちの1冊が、『The Shrinking of TreehornFlorence Parry Heide (著)、Edward Gorey(イラスト)。エドワード・ゴーリーが大好きな子どもだったそうだ。もうひとつ紹介してくれたのは、マザーグースに出てくる挿絵だ。貯蔵室でお手伝いのハンナ・バントリーが羊肉の骨を貪り食っている絵だ。

Hannah Bantry in the pantry,
Eating a mutton bone;
How she gnawed it, how she clawed it,
When she found she was alone!

 この絵本『ぼくは川のように話す』は、吃音をもつ男の子の話なのだが、主人公がnot brokenだと気づく話で、励まされる人も多いだろう、と同氏は語った。作家に文の意味を尋ねるのは野暮かもしれないが、今回は絵の意味を画家に訊き、文からではなく絵からその意味を知るよい機会であった。テキストではなく絵のみでも物語があり、絵はなんと雄弁であるかと気づかされた。

 先日、同じくJBBYのイベントで絵本作家のたてのひろしさんの話を伺った。『どんぐり』という絵本についての会だった。この絵本には文字がない。文字があることで風の音が限定されるなど、読み手の想像力が限定されてしまう。この本も何度でも手にとってしまう1冊だ。絵から絵本を読み解く。文字があるとつい文字を読んでしまうが、絵本の絵から物語を読むことを思い出した。大人になってしまったわたしたちこそ、絵本が必要なのかもしれない。

 『ぼくは川のように話す』の内容についてはぜひ手にとって楽しんでほしいので説明しないが、最後に子どもたちにとって絵本とは何かを尋ねられたときにスミス氏はこう答えている。子どもが自分のプライベートな領域を模索できる安全な空間(safe space for children to explore personal spectrum)。共感を掻きたてるもので、ゲームやスマホとは競合しない、子どもはいつでも絵本を必要としていて、絵本が必要なのは子どもだけではなくて、すべての人が必要としている、と同氏は締めくくった。(会場から、昨今では子どもはゲームやスマホで忙しいので、それに対してどう思っているかと質問があった。)

 同氏のその他の作品として、『おばあちゃんのにわ』が同じく偕成社から刊行されている。これから出てくる新作では、「Do You Remember?」が11月に刊行予定だ。

 現在わたしが参加している勉強会で、次の課題が『おばあちゃんのにわ』の原作『My Baba’s Garden』なのだが、今回の講座を聴いて、いきなり訳しはじめるのではなく、まずは絵から物語を読んでみようと思った。

 同じくスミスさんの作品『このまちのどこかに』(評論社)に出てくる主人公について、会場から質問があった。表紙絵を見てもらうとわかるが、男の子か女の子かよくわからない。これはあえて性別がわからないようにしてあるそうで、男の子か女の子かクエスショニングかよくわからないひとりの子どもの物語として読んでもらえるようだ。

 スミス氏が絵を担当したこの絵本『ぼくは川のように話す』は光と影が美しい。だが美しいだけではなく、吃音をもつ男の子がこれでいいと自分で思えるようになる本なので、ぜひ手にとってみてほしい。冒頭から主人公の目で自分も景色を眺め体験しているような感覚になる1冊である。

『ぼくは川のように話す』
文:ジョーダン・スコット
絵:シドニー・スミス
訳:原田勝
受賞歴:
産経児童出版文化賞・翻訳作品賞(2022)
社会保障審議会児童福祉文化財・特別推薦(2022)
児童福祉文化賞推薦作品(2023)https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784034253700

『ヤングケアラーってなんだろう?』ポプラ社

日本国際児童図書評議会(JBBY)が主催するノンフィクションの子どもの本を考える会の課題で「多様性について子どもに伝えるノンフィクションの本」をひとりずつ1冊紹介することになった。「多様性」とはなにか。案内には、「多文化共生、バリアフリー、生物多様性、いじめ、差別、ジェンダー問題等々、さまざまな切り口が考えられる」と書いてある。「多様性」を辞書で引いてみると、「いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと」(デジタル大辞泉)とある。ほかの人と違っていて、子どもたちが悩み、一見わかりづらく、大人の手助けが必要と思われることとして、わたしは「ヤングケアラ―」になっている子どもについての本を選んでみた。

え? それって多様性? と思うかもしれないが、ふつうの子どもと同じように見えて、家庭の事情で子どもらしい生活を送れない子や、相談するほどのことでもないと問題を自分で抱えてしまったり、家族のことだから話すのが恥ずかしいと相談することを諦めていたりする子、ケアが必要な子どもなのに自分自身がケアを提供する側になり勉強や進学に影響がでる子などがいる。見た目にわかりやすく周りから配慮される「多様性」とは異なり、ほかの人とは違うのにふつうに見える、自分自身もふつうに接してほしいと思う気持ちもあり、助けを得られない小中学生がいることを考え、このテーマを選んだ。

今回選んだのは、ポプラ社から2023年4月に刊行された『ヤングケアラーってなんだろう?』(監修 濱島淑恵、協力 黒光さおり)だ。<みんなに知ってほしいヤングケアラー>シリーズの第1巻だ。全4巻あり、そのほかに『きみの心を守るには』『きみを支える社会のしくみ』『ヤングケアラー先輩たちの体験談』がある。

簡単に本の内容を説明しよう。「ヤングケアラ―」とは「家族の世話(ケア)や家事をしているおおむね18歳までの子どものこと」(p2)と書いてある。それってお手伝いじゃないの? と思う人もいるだろう。では「お手伝い」と「ヤングケアラ―」の違いはなんだろうか? 負担が大きかったり、勉強をしたり友だちと遊んだりできなかったり、心や体に不調を感じたりするようになると、それはもうお手伝いではないと同著は説明している。家族の世話をしている子どもはどのくらいいるのだろうか? 2020年度に始まった調査では、小学6年生の15人に1人、中学2年生の17人に1人が家族の世話をしているという(p14, p15)。ケアの対象は主にきょうだい、次いで父母、祖父母である。半数以上のヤングケアラ―がほぼ毎日世話をしていると答え、小学6年生は1日平均2.9時間、中学2年生は1日平均4時間をケアに費やしている。世話を始めた時期は、小学校高学年が多い。相談をしたことがあるかという問いには、約7割がしたことがないと回答している。相談した人はだれに相談したのだろうか。主に家族、友人、学校の先生とのことだ。本著ではその他の相談相手として、保健室の先生、ホームヘルパーやケアマネジャー、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、医師や看護師、役所や保健センターの人、近所の人、親戚を挙げている。家族、友人、学校の先生に相談しても解決しなかったら、ぜひ家族以外の信頼できる大人に相談してみてほしい。ではなぜ相談しなかったのだろうか。相談するほどの悩みではないと答えた人が7割以上を占めている。また家族の世話をしていることでやりたいのにできないことは? という問いには、半分以上が「特にない」と答えている。本来であれば大人がするような家族の世話や家の仕事を子どもがすることで、勉強したり友だちと遊んだりという子どもらしい生活を送るべき時期を逃してしまう。やりたいけれどもできないことは特にない、という言葉に安心してはいけないと本著は警鐘を鳴らしている。

本著では子どもの権利についても紹介している。まずは1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」。その中で定められている4つの権利を説明している。生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利だ。またイギリスにおけるヤングケアラ―の権利も取りあげている。ヤングケアラ―という言葉は日本ではまだ馴染みがないかもしれないが、イギリスでは1993年に論文が発表されており、日本よりも対応が進んでいる。イギリスにおけるヤングケアラ―の16の権利のなかには、「ケアをすることをやめる権利」というのがある。少子高齢化が進み、共稼ぎをする親も増え、家族の世話に毎日3、4時間を費やし、友だちと遊んだり、部活に入ったり、勉強したりという子どもらしい生活ができない子が1クラスに1、2人いる。本著は、特別視が必要なのではなく、ひとりではない、隠す必要はない、相談できる、と思える子どもが増えるように、大人も学べる1冊だろう。ぜひ手にとってみてほしい。

ヤングケアラーってなんだろう?
(監修 濱島淑恵、協力 黒光さおり、ポプラ社)

小網代の森

 昨年から参加している勉強会の課題で文章を書いたのでここにも載せておく。筆者の記憶をもとに書いた文章なので事実と違う場合があることを了承願いたい。

小網代の森

 三浦海岸から134号線の坂をのぼっていくと、のぼりきったところは前方は相模湾、左手は三崎港、右手は鎌倉方面だ。134号線は交差点を右に曲がり鎌倉方面へと向かう。交差点を少し右へ行ったところの左手が、小網代の森の入り口だ。標高約75メートル。県道から逸れて森へと入っていくと、一気に車道からの喧噪が聞こえなくなる。山肌から染み出る清水が小川のせせらぎとなり、森の中を流れていく。遊歩道の階段を下りていくと、初夏には新緑が芽吹く木々に絡みつく藤の花が美しい。階段を下りきると、そこは森の底だ。左右を覆うように木々が生い茂っている。小川の流れを追うように森の中を進んでいく。山肌に目をこらすとむき出しになった土壁の隙間にはアカテガニが潜んでいる。6月になると蛍の舞も楽しめる。春には鳥がさえずり、夏には蝉の鳴き声が降り注ぎ、秋には虫の鳴き声で賑やかだ。覆い被さるように茂る木々のトンネルを、四方八方から聞こえてくる生き物の鳴き声を聞きながら進んでいく。小川の川幅が広くなり、蒲の湿地へたどり着くと、辺りは明るくなり、頭上を覆っていた木々が開け、空が広がってくる。湿地は春には蛙の鳴き声が響き、秋にはトンボが飛び交う。緩やかな傾斜がまだあるようで、山肌から染み出た水は左へと曲がり、海を目指す。しばらく歩くと、左手にアカテガニがダンスを踊る干潟が見えてくる。湾がもうすぐだ。潮の香りがする。小川はすっかり川になり、小網代湾へ注ぎ、相模湾へと流れていく。源流が海へと注ぐまでの営みが、徒歩1時間くらいで見て回れる。京急電鉄の開発に反対して守られた自然。京急三崎口駅から2キロくらいの場所にある。